設立趣旨


日本および世界の防災減災が喫緊の課題となっている。防災減災・災害復興の推進には、地震、津波、火山、活断層、地球観測、気象、地盤、耐震工学、耐風工学、機械制御工学、水工学、火災、防災計画、防災教育、救急医療、看護、環境衛生、都市計画、農山漁村計画、森林、海洋、地理、経済、情報、エネルギー、歴史、行政など、多くの研究分野が関係する。

一方、学問の世界は専門分化がすすみ、他の専門の活動に関心が薄れ、他分野を暗黙に信頼することが多くなり、重要な議論はそれぞれの分野内で行われがちである。加えて、全体を統合する力も弱くなっている。防災対策は、専門分野の枠をこえて、理工系だけでなく社会経済や医療も含めて総合的かつ持続的に取り組む必要がある。これらの研究は専門分野ごとに深めるだけでなく、異なる分野との情報共有や平常時の交流を活発化させる必要がある。さらに、研究成果が国や地域の防災・減災対策に反映されるように、行政組織との連携を取ることも求められている。

東日本大震災を契機に、日本学術会議の土木工学・建築学委員会が幹事役となり「東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡会」を平成 23 年に設立し、30 学会による学際連携を進めてきた。この取組みをさらに発展させ、自然災害への防災減災・災害復興を対象に、より広い分野の学会の参画を得ながら、研究成果を災害軽減に役立てるため、「防災学術連携体」を創設する。

防災学術連携体は、日本学術会議と連携して平常時から学会間の連携を深める。大災害等の緊急事態時には、日本学術会議と共に、学会間の緊急の連絡網として機能するべく備える。平常時から政府・自治体・関係機関との連携を図り、防災に役立てると共に、緊急事態時に円滑な協力関係が結べるように備える。大災害への備えと対応は長期にわたるため、継続性のある組織となることをめざす。学会間の交流をすすめ、より総合的な視点をもって防災減災に取り組むことができる若手研究者を育てる。さらに、海外の学術団体・関係機関と国際交流をすすめ、世界の防災に寄与することをめざす

日本学術会議では、平成 26 年 2 月に「緊急事態における日本学術会議の活動に関する指針」を制定した。これに則り、平成 27 年 7 月に日本学術会議幹事会附置委員会として「防災減災・災害復興に関する学術連携委員会」が設置され、同委員会は第24期(平成29年10月より)に継続して設置されることになり、名称を「防災減災学術連携委員会」に変更して、防災学術連携体とともに活発な活動を進めている。

日本列島の地震活動が活発化し、南海トラフ地震や首都直下地震の発生が危惧されると共に火山噴火が増加している。地球温暖化の影響などで気候が変動し、大型化する台風、記録的な豪雨や豪雪、旱魃、竜巻など災害外力が高まっている。防災学術連携体は、高まる災害外力から国土と生命を護るために、学会をこえて議論し、学会間の連携を深め、防災減災・災害復興に関わる諸課題に取り組む決意である。


一般社団法人防災学術連携体の設立

東日本大震災を契機に、日本学術会議を要として震災に関わる学会の集まる連携活動を始め、2016年1月に自然災害全般を対象にこの活動範囲を広げ「防災学術連携体」を結成しました。自然災害が激甚化するなかで、学会間の情報共有、政府・自治体・関係機関との連携、学術界からの情報発信など、これまで多くの実績をあげてきました。

一方で、設立から5年が経ち、活動が本格化するにつれて、任意団体であることの限界が指摘されるようになりました。政府や関連機関との連携においてだけでなく、社会的信用の確立においても法人格を持つ必要性が高まっております。

2020年暮れから幹事会を中心に協議を重ね、今後の運営の負担が大きくならないように考慮して「一般社団法人(非営利型)」を申請することになり、手続きを進めてきました。この基本的な形は「法人運営を担う理事会と事務局があり、その上に学協会が緩やかなネットワーク組織を形成して主体的に活動すること」が望ましいと考え、これからも、正会員の防災連携委員、学識会員などから選出された幹事会が、防災学術連携体の事業の執行にかかわり、また、理事会に必要な意見を述べることができるようにしました。

このたび正式に認可され、一般社団法人防災学術連携体が2021年4月1日に発足しました。これまでの会員学会の皆様、特任会員の皆様、幹事の皆様のご努力に感謝すると同時に、今後の活動へのご協力とご支援をよろしくお願いいたします。

ここに、一般社団法人の定款と一般規則(案)を示すとともに、具体的な変更点を以下に述べます。

<主な変更案>

1) 会員を、正会員、学識会員、特別会員及び賛助会員の4種とし、正会員、学識会員及び特別会員をもって一般社団法人の社員とします。正会員は「学会」から「学協会」に変更し、防災に関わる研究・活動に関わる国内の学協会の加盟を可能とします。また、特別会員を新設し、防災学術連携体に強く参加を希望される研究者の団体を、幹事会・理事会で特別に入会の承認をすることとします。これまで幾つかの協会や大学から参加希望があり、広やかな学術研究に携わる団体のネットワークにする方向も良いと考えました。

2) 正会員及び特別会員の年会費は 50,000円とします。ただし、正会員のうち中小の学会の年会費についてはこれまで通り、その会員数に応じて、30,000円、または 20,000円とします。

3) 特任会員(会費無料の個人)をやめて、学識会員(年会費 5,000 円)を設置します。特任会員の皆様におかれましては、学識会員としての継続をお願い致します。

4) 正会員と特別会員は、団体の代表者として防災連携委員2名を選任します。正会員と特別会員は総会で各6票の議決権を持ちます。

5) オンラインで総会や幹事会が開催できるよう、定款を整備しました。

6) 毎年7月1日から6月30日までを事業年度とします。学協会の年度は4月始まりが多く、防災連携委員の選任の時期を考えると、連携体を3ヶ月程度遅く始める方が良いと考えました。総会は8月上旬を想定しています。

7) 「主担当学会」はこれまでは事務局を担うとしていましたが、今後は、「主担当学協会」として、活動そのものの支援を行なっていただくことに変更します。

8) 多くの学会のように、防災学術連携体の中に委員会を設けて活発な活動が行えるようにしました。