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日本学術会議公開シンポジウム/第8回防災学術連携シンポジウム
第4回防災推進国民大会2019セッション
「あなたが知りたい防災科学の最前線 ―激化する気象災害に備える―」
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当日のシンポジウム終了後に質問用紙にて寄せられました質問に対して回答させて頂きます。
大気の河は数値計算結果ということですが、レーダ観測でリアルタイムに見ることができないのでしょうか?もし現状でできないなら、出来るようになるのはいつくらいでしょうか?
大気の河は水蒸気の流れなので、雲や降水を観測するレーダではみることができません。大気の河の水蒸気の流れの中で、雲や雨が形成されるとレーダで観測できるようになります。ただし気象衛星からは水蒸気に感度がある周波数帯の電波で観測することが可能です。(坪木和久:名古屋大学宇宙地球環境研究所)
近年多発している線状降水帯、事前予測がどこまで可能なのですか、台風との違いをご教示ください。
線状降水帯のほとんどは現在の技術では予測ができません。現在、その予測に向けたさまざまな研究が行われています。
線状降水帯は台風とは規模が異なり、一桁ほど小さな現象となります。台風の接近時に線状降水帯が発生することがあります。接近時だけでなく遠方にあるときに線状降水帯が形成されることがあります。2000年9月の東海豪雨はその典型です。また、台風は暴風と豪雨の両方が問題となりますが、線状降水帯は豪雨が主な問題となります。(坪木和久:名古屋大学宇宙地球環境研究所)
気象庁が発表している「大雨警報の危険度」と今回講演の「豪雨度」との違いについて説明してください。
今回解説した土砂災害に対する発生豪雨の評価基準としての「豪雨度」は、地震でいえば「震度」あるいは「計測震度」にあたる指標で、風害関係でいえば、「Fスケール」に相当します。つまり、「豪雨度」は自然の猛威(この場合、土砂災害の発生豪雨)の結果としての評価を求めるための指標です。これに対して、気象庁の「大雨警報の危険度」は避難行動を促すための指標で、事前に災害発生の予測時刻に対応した「危険度」を示し,避難行動に結びつけることが目的です。まとめますと、「豪雨度」は、「震度」や「Fスケール」と同様、発生後の土砂災害豪雨の被害の程度と関連した評価基準を示す指標で,基本的にはトリガー雨量と先行雨量という因子に地域雨量という因子を用いた指標ですので、気象庁の「大雨警報の危険度」とは全く異なる考え方から出された指標です。現在,豪雨階は0~6までの7段階となっていますが、今後の豪雨の推移によっては、更新することが考えられます。 (林 拙郎:静岡大学防災総合センター客員教授)
西日本豪雨災害において広島県では土砂災害警戒区域外でも被災した建物が少なくなかったという発表でしたが、なぜそのようなことが起きたのか教えてください。
まず、ここでいう被災建物とは、航空写真から判読された土砂氾濫域の範囲内にある建物を指し、必ずしも実際に被害が生じた建物のことを指しているわけではありません。その上で、警戒区域外に被災建物が多くみられた理由としては、大きく以下の二つの理由が考えられます。
一つ目は、現在全国的に警戒区域の調査・指定が進んでいるところであり、基礎調査は完了していたが、警戒区域として正式に指定される前に災害が発生した箇所が多かったため、二つ目は、呉市天応西条のように、崩壊した土砂によって河川が堰き止められることにより、土砂を含んだ水が想定よりも広範囲に広がった地域があったため,と考えられます.前者については、基礎調査および警戒区域の指定が進めば、警戒区域外に被災建物が生じる件数は少なくなると思われます。一方、後者については、西日本豪雨災害のように、土砂災害+河川の氾濫といった複合的な災害が発生した場合、単一の災害を想定した場合よりも広い範囲が被災してしまう可能性があり、今後詳細な検討が必要と考えます。(三浦弘之:広島大学 准教授)
国土交通省が整備を進めている危機管理型水位計の情報を、今回紹介のあった全国版RRIモデルに反映することは可能でしょうか?
データが限られる中小河川において、危機管理型水位計は重要な水位情報を提供します。現時点では反映できていませんが、多地点の観測水位情報をモデルの予測結果に反映させる「データ同化」という技術の開発を進めています。その開発が進んで、今回のシステムに導入することができるようになれば、危機管理型水位計の観測情報のある地点では、モデルの解析値(初期値)がその観測水位に近づくように擦り付けることができます。(佐山敬洋:京都大学防災研究所 准教授)
モデルの空間分解能が150 mということですが、最近はより細かい地形情報があると聞きます。スーパーコンピュータを利用すれば、5 mや10 mのシミュレーションができるようになるのでしょうか?
国土地理院が整備している地形情報の空間分解能は、平地で5 m、山地で10 mですので、理論上はその程度まで細かい解析も可能です。しかし、現在進めているシミュレーションは、全国を対象に、降雨から河川に流出する過程もすべて含まれるので、150 mでも膨大な計算量になっています。リアルタイムで運用する、予測の時間を長くとるといった研究課題が残っており、必要に応じてスパコン(地球シミュレータ)なども利用しています。当面は、150 mでも十分に細かいものと考えて、このスケールで開発を進めていきます。なお、150 mのメッシュといえども、中小河川の幅や深さは別途設定することができるので、川幅が150 mになるということはありません。(佐山敬洋:京都大学防災研究所 准教授)
被災後は衣食住の問題が発生しますが、特に水は重要です。大規模な建物には受水槽があり、飲料として有効です。上水の配管破損で供水がとだえた場合、何日程度飲料可能なのですか?目安があれば周知してください。(塩素の殺菌効果の継続、夏、冬、屋内外での差など)
(質問内容のうち医療機関に関しての回答)
全ての医療機関で水の備蓄をしっかりやっているわけではありませんが、厚生労働省が定めた災害拠点病院の指定要件には、「災害時の診療に必要な水を確保すること。(受水槽、井戸、給水協定の締結等)」とあります。多くの医療機関では入院患者や職員のために、3日間をメドに飲料水を含めた水の確保をしていると思います。(北川喜己:名古屋掖済会病院 副院長)
自然災害が激しくなる中で、「安全な土地を選んで住む」「防災を前提に土地利用のあり方を見直す」ことが重要になると思います。防災学術連携体でこのようなメッセージを出す予定はありますか?
人口が減少する中で、政府は国土のグランドデザインで、コンパクト&ネットワークの基本方針を打ち出し、小さな拠点づくりと拠点間の公共交通の整備を進めようとしています。ここで、防災の視点から、安全な地域へのコンパクト化の実現が必要であると考えています。このことを防災学術連携体でも議論していきたいと思います。(米田雅子:防災学術連携体代表幹事)
なお、以上のご質問の他に、学術的な成果を自治体が活用しやすいような形で展開すべきなどの貴重なご意見もいただきました。