防災学術連携体・特別シンポジウム

防災教育と災害伝承への多様な視点-東日本大震災から 10 年を経て-

関連シンポジウム:防災教育と災害伝承(2021年11月6日14時30分~)
当日のシンポジウム終了後に質問用紙にて寄せられました質問に対して回答させて頂きます。
震災遺構を残す際に、維持費用以外の課題として、「被災当時を思い出すから見ていて辛い」といったような心理的な負担もあると推察しますが、「生きられた遺構」ではそういった負担も和らげる、あるいはそれを感じさせないほどのポジティブな力があるとお考えですか。そのような、震災遺構に対するネガティブな感情との向き合い方についてお聞きしたいです。

犠牲者が出た「負の遺構」と呼ばれる対象物に対し、被災当事者らがどのような記憶と語りを重ねていくのか、それは外部からの語られ方に左右するところがあると考えます。当事者は、必ずしも被災による事実を負の感情と直結させているわけではない、というのが調査の中で得られたことです。負の感情は、外部からもたらされる要因もある、ということが周知されていない、という現実もあります。三陸沿岸の人びとは、海とともに生きてきた経験があります。それは、雄大で豊穣をもたらす海である反面、自然災害や海難事故など、不慮の死、とりわけ、行方不明という曖昧な死もまた、日常にあります。こうした経験がある分、津波で生き残り、その後、回復し、新たな生命を見せる自然物を震災遺構と位置付けることが、彼らにとって、これからを生きる意味を見出すと考えます。
「不確実性」についてワークショップが中高校生レベルの教育現場に盛り込めれば、より自分事になるように感じますが如何でしょうか。

同感です。私達が実施したワークショップででも、大人に混じって中学生が参加してくれたことがあったのですが、どの参加者もその真剣に取り組む姿勢に感銘するような空気をもたらしてくれたことがありました。中高生でもワークショップで体感すれば、十分体得できるものと思います。そうしたことを教育現場で仕組づけていくことはとても重要かと思います。どのようにしたらそれが可能か知恵を出し合えれば幸いです。
私自身岡山県出身で、小学校6年生の時で下校後にテレビで東日本大震災の映像を見ていましたが、日本の映像ではないと思ったと同時に、立ったまま呆然としてしまい、何もできないことに対して無力さをとても感じていました。この出来事が、自分が地球科学を専攻する・1人でも多くの命を救えるような大人になるという目標ができたきっかけにもなりました。
遠く離れており、正直関係ないということではなく、実際に経験しなくてもその当時の映像を見て「当事者」であると捉えて、その出来事を伝えることのできる1人であるという考え方は非常に大事であると改めて感じることができました。まだ鮮明に覚えているあの日の出来事を風化させないように、実際にあったことを伝えていける1人になりたいと思います。 そして仮に自分が親という立場になった時に、「こんなことがあった」「このことは必ず伝える必要がある」ということを言えるようにしておきたいと思いました。


小学校6年生の頃に東日本大震災の映像をみたときのご自身のお気持ち、そしてその後地球科学を専攻されるようになったという経緯を興味深く拝読いたしました。実際に経験しなくても、とくに同年代の子どもの記録にふれることで災害を自分のこととして当事者意識をもって捉えることができるようになるのではないかという点は、子どもたちが異口同音に語っていたことでした。今回お話することができなかったのですが、宮城県立多賀城高校災害科学科3年生へのインタビューで「(東日本大震災で)被災したのが小学3年生なので、あいまいなところがあって、そのときのことを覚えているわけではなかったんですけど、実際に西日本豪雨の被災地に行ってみて当時のことを思い出せたので、記録が残っていればそのときのことを思い出すこともできるし、違う災害のことを見てそういえばあの災害のときこうだったなと思い出せたら、風化しないのかなと思います」という語りもありました。子どもたちの声に耳を傾けながら、引き続き防災教育や災害伝承について研究していきたいと考えています。また何かございましたらぜひ教えてください。
熱海の土石流の場合、途中に砂防ダムがあって、被災後の空中写真から想像すると流れを少し弱めたのではと思います。また、浚渫を繰り返すことによって持続的になると思います。一方、長野県の岡谷市の土石流は、道路の下の通路が土石流をまとめて、人家に激突したように思います。調査しようと思っていますが、如何でしょうか。

講演では触れませんでしたが、確かに熱海の土石流では砂防ダムにより、多少は流れを弱めたと思いますが、土石はそれをはるかに上回る量だったと聞いています。ちなみに現地調査ではその現場へは全く近づけませんでした。私は砂防ダムを決して否定している訳ではなく、ケースバイケースだと思いますが、多くの自治体では少子高齢化、人口減、赤字財政に苦しむ状況であり、今後もずっとそれを維持管理し、自然に逆らうような持続可能性があるのかなど、広い分野から効果を含めた検証が必要だと考えています。一方、岡谷市の土石流は、私は調査しておらず分かりません。今後の対策に向けて大変重要な調査だと思いますので、何かわかりましたらお教え頂けるとありがたく思います。